リードの師と仰ぐ広田先生とは年に何度かじっくりとお話を聴かせて頂く機会があるのですが、お話の中には幾つもの「気になるワード」が出てきます。
それは聴いたその時にはよく理解出来ていないことも多いのですが、何ヶ月か(あるいは何年か)経ってからふと「ああ!!」と頭の中で点と点が繋がって線になります。なので気になったワードはとにかく聴き漏らさずに、書き留めておくようにしています。
その中でも特に印象深いのは「神経質でないリードがいい」というワードです。これは、アンブッシュアのことをあれこれ考えなくても、パクッと咥えて吹けば発音も音程もストレスなく吹ける、程よい抵抗感のリードのことだと認識していて、つまりは「音楽だけに集中出来るリード」のことだと思っています。このワードを初めて聴いて以来、いつもそのことを頭に思い浮かべながらリード製作をしています。
また最近は違う側面から、例えば作る時に何かがちょっとでも狂うと全然いいリードが出来なくなってしまうような「神経質さ」がある時には、工程のどこかに何か重大な問題があるということにも気付きました。これは特に糸巻き以前の工程のことが多く、私の場合はシェーピングの仕方の問題でした。それまでは日々のリードの出来に一喜一憂していましたが、昨年これに気づいてからはリードメーキングが格段に楽になりました。
私は東京アトリエと山口アトリエとでガウジングマシンとシェーパーマシンは違う個体を使っていますが、個体差は全く気になりません(持ち運びが大変なため。さすがにメーキングマシンだけは毎回持って移動して同じものを使っています)。神経質でない、大らかなリードに少しは近付けたのかな?
「針の穴を通すような正確さ」でリードを作るのはとてもストレスですし、それを何十年と続けるには精神衛生上よくありません。材は常に変化しますし、日本には四季があり湿度も20〜100%の範囲で移ろいます。あまり神経質にならずに大らかな気持ちで作れる(演奏できる)リードを、日々意識して行きたいですね。
こちらは実にふてぶてしく、そして大らかに演奏する【オーボエ吹きのシゲオ】くん。久下貴史さん(マンハッタナーズ)の版画作品で、山口アトリエの玄関に飾ってあります!
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