気温と湿度、気圧がリードに与える影響について

更新日:10月21日

「今日は湿度が高いですね!」「むっちゃ乾燥してますね〜(泣)」などは、オーボエ奏者にとって「こんにちは」と同じ意味ですよね。中学生の頃の英語の教科書にイギリス人は挨拶がわりに天気の話をするという話がありましたが、まさにそんな感じです。

リードの材料が植物である以上【湿】が影響してしまうのは言わずもがなですが、その際影響するのは果たして「湿度(%)」だけでしょうか?


なんとなく「湿度20〜30%は乾燥」「40〜50%は快適」「60%〜はジメジメ」というイメージを皆さんお持ちかと思いますが、例えば夏は湿度が60〜70%と高いですが、直前の梅雨時期とは違って意外とリードは乾きやすいのはご存じでしょうか?これは夏は洗濯物が乾きやすいことからもイメージしやすいのではと思います。同じ湿度の高い時期なのに、この差はいったいどこから来るのでしょう?


ひとつには夏は気温が一段階高くなるため、水分が蒸発できる空気中のキャパ(飽和水蒸気量)に余裕が出ることが影響しています。「気温が高いと洗濯物が乾く」のはこのためです。

そしてもう一つの違いは【気圧】です。夏になると太平洋高気圧の影響で梅雨時期よりも気圧が少し上昇し、その後秋〜冬にかけてどんどん気圧が高くなっていきます。


気圧変化のリードへの影響については、既に多くのプロオーボエ奏者の方から指摘がなされています。これは気圧の極端に低い高原や台風の日などの演奏で、リードが大きく変化することを経験的にご存知だからだと思います。

リード材であるケーンと気圧変化の関係についての科学的な研究は私の調べた限りまだなされていませんが、木材全般については【気圧が低いほど吸水性が高くなる】ことが既に分かっています。これは気圧低下に伴い繊維中の空気が抜けて、水が入り込みやすくなるためだそうです。

植物の茎が根から摂取した水を吸い上げるのはいわゆる「毛細管現象」というやつですが、この「毛細管現象」自体も気圧の影響を大きく受ける(気圧を下げた方が液体を吸いやすくなる)ことが一般に知られています。私たちの日常生活でも、建材に防腐液を染み込ませる工程や液晶テレビの液晶を製造(封入)する工程などでわざと気圧を下げて作業することで、作業時間の大幅短縮に応用しているそうです。


このことから、私は【気圧が低い場所では、リードが水を吸いやすくなる】のはほぼ間違いないと考えています。更には気圧の低い時は湿度が極端に高い場合が多く、一度吸い込んだ水がいつまでたっても蒸発しないこともリードの状態に大きな影響を与えているのだと思います。


気圧低下と木材の吸水性についての記事の一例「木材への液体の浸透性」

https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/1304/1304-1.pdf


植物の毛細管現象について、一般社団法人 日本植物整理学会サイトの説明

https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=656



このように、リードは【気圧と温度・湿度(飽和水蒸気量)】の影響を大きく受けます。気圧や湿度は場所・季節で大きく変化しますが、そんな中で一年中いつもリードに同じ量の水を含ませているとどうなるか…気圧の低い日にはリードの繊維があっという間に水を含んで重くなってしまい、振動しなくなります。気圧の低い日にメーキングマシンにかけると全く振動しなく感じてしまいますが、これもリードがいつもより水を吸って重くなっているためです。一度乾けばいつも通り振動してくれるので、慌てて削り過ぎないよう注意が必要です。 

逆にリードが乾きやすい環境、冬場の暖房の効いた屋内や気温の高い夏などには、演奏前にリードに水気をゆっくりと馴染ませてやる必要があります(水に浸けっぱなしにすることはお勧め出来ません。少量の水を、ゆっくり時間をかけて馴染ませます)。



【まとめ】

リードを湿らせる過程には気圧が、リードが乾く過程には室温と湿度(飽和水蒸気量の余力)が大きく影響している。同じリードでも水が入る時と抜ける時とで、一番影響を受ける因子が異なることがポイント。


○気圧が低く、気温が低めで湿度がとても高い時(梅雨時期や標高の高い場所など)ではリードは水を吸いやすく、しかも乾きにくいため、乾いた状態でも最初からある程度の水分を含んでいると考えられる→最初から先端が柔らかいため、水に一瞬浸けてやればすぐに振動してくれる(水を与えすぎると逆に振動しなくなる)


○逆に晩夏〜冬の高気圧下でリードは水を吸いにくく、特に冬は低湿度+暖房のためリードはものすごく乾きやすくなる。そのため水に浸ける前のリードはカラカラに乾いて硬くなっている→水に一瞬浸けた後、しばらくリードケースに置いて(冬:10〜30分、夏:10分前後)ゆっくりと水気を馴染ませて、先端を柔らかくしてやらないと振動してくれない


これは乾いた状態のリードを指で触って先端の閉じ方を確かめてみると、柔らかいか硬いかでどちらの状態か分かると思います。またリードが乾いた状態のままリードだけで軽くタンギングしてみて、クリアに発音出来る時はリードはあまり水を必要としていません。スマホのお天気アプリで気圧や湿度をチェックしてもいいと思いますし、こちらのブログでも季節の変わり目ごとに取り扱い方の情報を発信しています。



リードは湿らせると柔らかくなり、乾くと硬くなります。気圧の低い時はリードを「湿らせ過ぎない」、高い時にはリードを「硬いまま吹かない」ことが重要です。私は経験上 気圧1007hPaあたりが両者の境目と考えています。


このことを踏まえて、ぜひ各季節のリードの取り扱い方の記事を読み直してみて下さい。何か新しい発見があるかも知れませんよ!


1〜3月→こちら

4〜5月→こちら

梅雨時期〜7月→こちら

8〜10月上旬→こちら

10月中旬〜→こちら

11〜12月(今後更新します)


グラフ出典:湿度100 %はあり得る?―湿度のメカニズムとは― | 電力・ガス比較サイト エネチェンジ https://enechange.jp/articles/humidity-100-per-cent

こちらも参考に:絶対湿度と相対湿度の違いとは I ウェザーニュース

https://weathernews.jp/s/topics/202002/280095/


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